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『ではこの辺で…』
『えぇ…亜紀ちゃんによろしくお伝えください』
沖田はお千と、島原の入口で別れた。
『今戻りましたぇ何か、変わった事ありました?』
お千は店の、使用人に訪ねた。
『あ、女将さん!今お帰りで?変わった事無いんですが、二階奥のお侍さん方がまだ、代金支払ってくれませんで…困りました』
『まだ払わないんかっ!ちょっと話しつけてくる』
お千は苛立ち二階へ上がっていった。
寺田屋という名で旅館を営み十年以上、女一人で店を守ってきたお千。
『お侍さん方、宿泊の料金頂きに上がりましたっ!いったいいつまで、払わんつもりなん!大の男が!役人呼びまっせっ!』
お千は怒鳴りながら、襖を開いた。
しかし部屋の中には、先日から泊まっていた侍達の姿は無かった。
『あら…いや、しまへん…』
お千は力抜けた顔をしながら、もぬけの殻になった部屋に入っていった。
『汚いわ~また戻ってくるんやろか…ん?なんやこれ…?』
お千は部屋の隅に丸めてあった紙筒を、怪訝そうに開いた。
!!!
『な、なんやこれは?』
お千の眉間には深いシワが寄っていた。
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