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2月の下旬。
お父さんの容態が急変した。
私とお母さんは買い物に出かけ、二番目のお兄ちゃんだけが病院に残っていた。
急変の知らせを聞き、お母さんと私は急いで病院へ戻った。
病院へ到着した頃、お父さんは治療室から出てきていた。
そしてそのまま手術室へと運ばれようとしていた。
その時のお父さんはたくさんの輸血と点滴をうっていた。
いつもは笑顔で接してくれる主治医や看護師さんの顔がこわばっていた。
主治医は早口で指示をだし、看護師さんはあわただしく走りまわっていた。
お母さんは泣きながら、お兄ちゃんたちは心配そうにお父さんに必死に話しかけていた。
私は状況がのみこめず、呆然と立ち尽くしていた。
お父さんは意識が朦朧としながらも、お兄ちゃんたちの手を握りしめていた。
そしてかすれた声でお母さんに『愛してる』とだけ言い残し、そのまま手術室へと入って行った。
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