12490人が本棚に入れています
本棚に追加
秋山さんの二回目のダイエット講座が終わり、あたし達は食べ終えたお皿を厨房に運んだ。
神崎の人間が昼間屋敷にいる事は殆どないので、あたし達が食べるお昼ご飯は朝ご飯の残り物――残り物と言うと貧相に聞こえるけど、実際は選び放題でかなりゴージャスだが。
だから、昼は厨房にコックはいない。
あたし達は自分で使ったお皿を洗いながら雑談していた。
「こんな広い屋敷に、あたし達しかいないなんて寂しいわよねぇ……」
秋山さんが、ふぅ、と小さく溜め息をついた。
「確かに……。こんなに広いんだし、もっと従業員沢山雇えばいいのに。なんでですかね?」
天下の神崎財閥が、屋敷の人件費をケチっているとは思えないし。
「坊ちゃまは、信用できる人間しかそばに置かないのよ。昔はダンディーな執事とか、メイドさんも沢山いて賑やかだったんだけどねぇ。社長と奥様がいなくなってから、殆ど他の職場に移動させちゃったのよ」
「へー……えっ? じゃあ、あたし信用されてるんですか? 会って間もない人間なのに……」
あたしが驚いていると、秋山さんはふふっと声を漏らし微笑んだ。
「満里奈ちゃんは、信用と言うよりも、一緒にいて安心出来るんじゃないかしら?」
「え……?」
あたしと一緒にいて、安心……?
「満里奈ちゃんは飾らない素直な良い子だし、優しいし。今まで坊ちゃまの周りには居なかったタイプだから、坊ちゃまも楽しいのよ」
「た、楽しい……?」
確かにあたしに意地悪したりからかってる時は楽しそうだけど……。
あたしは優貴さんの悪魔の微笑みを頭に浮かべた。
うぅ。なんか腑に落ちない……。
最初のコメントを投稿しよう!