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困惑顔のあたしにお構いなく、秋山さんが話を続ける。
「最近、笑顔も増えてきたし、生き生きしてるもの」
「ぜ、全然分からないですけど……」
秋山さんは、優貴さんが小さな頃からずっとそばにいるから、少しの変化にも気がつくんだなぁ……。
「私以外が坊ちゃまのお部屋に入るのも禁止だったの。だから、満里奈ちゃんが坊ちゃまの専属の使用人って知った時は、本当にビックリしたわぁ!」
「そうなんですか……」
優貴さんの事を何でも知ってる秋山さんがそう言うんだから、きっとあたしは本当に気に入られたんだろう。
少し、嬉しいかも……。
最初は迷惑としか思ってなかったのに。
変だなぁ……。あたし。
「まぁ、坊ちゃまのお父様とお母様が戻られたら、従業員も増えてまた賑やかになるし、それまでの辛抱ね」
秋山さんは最後のお皿の泡をすすぎ、布巾の上に重ねられたら食器の隣にそっと並べた。
「さてっ! 洗い物も終わったし、部屋に戻りましょ」
「あっ! あの……」
あたしは厨房を出ようとする秋山さんを慌てて引き止めた。
「……もし迷惑じゃなければ、これから毎日、屋敷のお掃除手伝わせて下さい」
「あら、いいのっ?」
「はい。結構ハードだったんで、毎日やれば痩せるかなぁって……」
それに、お金も貰って使用人としてここにいるのに、殆ど何もしてないし……。
「ふふ、ありがとう。じゃあ、また部屋に呼びに行くわね」
「はいっ!」
あたしが返事をすると、秋山さんはにっこり笑って、
「満里奈ちゃんも、ここに来てから良い風に変わったみたいね」
そう言い残し、部屋を出て行った。
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