制御不能!

38/56
前へ
/741ページ
次へ
 困惑顔のあたしにお構いなく、秋山さんが話を続ける。 「最近、笑顔も増えてきたし、生き生きしてるもの」 「ぜ、全然分からないですけど……」  秋山さんは、優貴さんが小さな頃からずっとそばにいるから、少しの変化にも気がつくんだなぁ……。 「私以外が坊ちゃまのお部屋に入るのも禁止だったの。だから、満里奈ちゃんが坊ちゃまの専属の使用人って知った時は、本当にビックリしたわぁ!」 「そうなんですか……」  優貴さんの事を何でも知ってる秋山さんがそう言うんだから、きっとあたしは本当に気に入られたんだろう。  少し、嬉しいかも……。  最初は迷惑としか思ってなかったのに。  変だなぁ……。あたし。 「まぁ、坊ちゃまのお父様とお母様が戻られたら、従業員も増えてまた賑やかになるし、それまでの辛抱ね」  秋山さんは最後のお皿の泡をすすぎ、布巾の上に重ねられたら食器の隣にそっと並べた。 「さてっ! 洗い物も終わったし、部屋に戻りましょ」 「あっ! あの……」  あたしは厨房を出ようとする秋山さんを慌てて引き止めた。 「……もし迷惑じゃなければ、これから毎日、屋敷のお掃除手伝わせて下さい」 「あら、いいのっ?」 「はい。結構ハードだったんで、毎日やれば痩せるかなぁって……」  それに、お金も貰って使用人としてここにいるのに、殆ど何もしてないし……。 「ふふ、ありがとう。じゃあ、また部屋に呼びに行くわね」 「はいっ!」  あたしが返事をすると、秋山さんはにっこり笑って、 「満里奈ちゃんも、ここに来てから良い風に変わったみたいね」  そう言い残し、部屋を出て行った。
/741ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12490人が本棚に入れています
本棚に追加