第一章 もう一人の騎士

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「暑い!」  旬はセシリーが居るとは知らず、薄いブランケットをどけながら体を起こした。 「旬さん、おはようございます!」 「うわ!」  朝起きたら真横に誰かいるという状況に慣れていない旬は、リアクション芸人もビックリな、普通のテンションで普通に驚いてしまう。  しかし、旬のリアクションは普通に正解だろう。  ここで爽やかに「やあ、セシリーおはよう」なんて言ったらどれだけ寝起きがいいんだという話になり、あっさり受け入れるのはいささか警戒心が薄過ぎる。  その点、このやりとりを見るだけで、旬がいかに普通かを垣間見る事が出来るだろう。  ジャン・ズーに帰って来て二日目、本当ならば騎士養成学園を出たその日に、王都ラングリード入りをして、騎士受領式典まで休養する手筈になっていたのだが、旬は思い付きでジャン・ズーに帰って来てしまったのだ。 「旬、起きたでしか?」 「旬、おはよー!」  バタバタと音を立てながら、フルーンとイレイアが寝室に突入して来た。 「あ、朝から何なんですか、というか開店準備してください」  旬は右手で顔の側面を撫で、眠気を覚まそうとするが、途端にあくびが出てしまう。 「大丈夫よ、三人娘ちゃんが準備してるから。それより、私と朝の散歩に行かない?」 「む、イレイアさん、今日の水汲みはイレイアさんだった気がしますよ」  セシリーは、今にも旬の手を引っ張ろうとするイレイアに牽制を入れる。
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