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「ふむ。まあ、これで伝わったな。さあ、訓練だ」
アリアスはそう言うと、先に部屋を出る。フルーンとセシリーは、旬に説明を求めるべく詰め寄るなか、イレイアは静かにアリアスのあとを追う。
「騎士様、旬を騎士にしてどうするつもり? 人不足じゃあるまいし……事と返答しだいじゃ、マジで殴るわよ?」
階段を降りる途中のアリアスに追い付くと、イレイアは鋭く睨む。
「む、何か勘違いをしているな。騎士になると言いだしたのは彼だ。そこに私の意志は存在しない」
「じゃあ何で騎士になるのよ」
「それは彼に訊くべきだな」
ピリピリとした空気が周りを支配し、テーブルを拭いていたケイトは、一触即発な雰囲気に朝から冷や汗をかいてしまう。
そんな空気をぶち壊したのは、ジャン・ズーの扉が開く音だった。
「あ、あの、まだ準備中で……」
ケイトは入店を断ろうとしたが、入って来た人物を見て固まう。
鎧を身に付けていないが、騎士のマントを身に纏うその姿は、この街の秩序を守る守護騎士だった。
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