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シェリーは更に旬へ食い付こうとしたが、冷静な部分がそれを止めさせた。
彼女の中の結論はこうだ。合理的に考えるとこの場の口論は無意味であり、結果としては何も生み出さない。
シェリーはその答えを基に、旬から視線を外すと背を向けて階段を上がって行く。
「野菜は普通でいいので、ルームサービスをお願いします」
シェリーはそんな捨て台詞を残し、完璧に姿を消した。
「……えーっと、ご主人? あの子はいったい」
まさかご主人という単語を使う事になるとはと思いつつ、旬はあの言動が気になり尋ねてみた。
この御時世、個人情報やらプライバシーやらで、一個人の情報を集めるのすら大変なのだが、それは日本の話であり……。
「いやね、ここだけの話。あの娘さんは、隣の国で騎士になるはずだったんだけど、こっちで騎士になるらしいよ?」
宿屋のご主人はどこで掴んだのか分からない情報を、あっさりと旬に流してしまう。もはや本当にここだけの話か疑ってしまうほどである。
「わけありであの物言いだろ? ありゃあ人間関係で苦労する口だよ」
「はぁ」
旬は気の無い返事を返すと、とりあえずルームサービスの札を差し出した。
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