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重装備の人物は手に持った布のような物を、恭しくダンウェル王に捧げた。
その黒い布を掴んだダンウェルは、はためかせて広げてみせる。
黒い布地に白い刺繍が施されており、その模様は鳥……もっと言えば不死鳥だろうか、それはマントのようだった。
跪くシェリーに、ダンウェルは優しく上着を着せるかのように、そのマントを羽織らせる。
「シェリー・ブランチェコ。下がりなさい」
老人の指示に従い、シェリーはダンウェル王に深々と礼をしてから、二、三歩ほど前を向いたまま下がり旬の横に戻る。
「次、小倉旬・トリアーデ」
旬は一瞬、自分の耳がおかしくなったと思い、老人の方をそれとなく見る。
気のせいか、今までに無いパターンで名前を間違えられた気がしてならない。
「小倉旬・トリアーデ。二度も言わすでない」
本気で注意されてしまい、旬は微妙なテンションのまま、ダンウェル王の前で跪く。
そして、先ほどと同じように、ダンウェル王は指示を出し、重装備の人物はマントを手渡す。
まるで卒業証書授与式だ。旬はそんな事を思っていた。
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