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国王と宰相の二人と一緒に歩くのは、いささか誤解や問題を招く可能性があるとの事で、ヨハネスの指示に従って旬は謁見の間に遅刻する事になった。
「遅刻をしろ……か」
人生で一度有るか無いかというと、無い部類に入る命令に、旬はつい苦笑してしまう。
「というか、ここ(中庭)でのスリーショットはいいのか?」
旬は中庭を眺めるが、ここは明らかに造られた空間である。というのも、旬が連れられて歩いた距離では、どう考えても外には出られないのだが、旬の入った一階の物置と称される部屋は中庭に繋がっていた。
「城の構造上のデッドスペースを使った隠し部屋か」
〈惜しい、実に惜しいよ。ご褒美にほっぺにチュウか、頭を撫で撫でしてあげる……って、この声は聞こえないか〉
突如聞こえて来た声に、旬は慌てて椅子から立ち上がると、周囲を見回す。
「誰ですか」
360度見回すが、誰も居ない。
〈え! ええ!! ワタシの声が聞こえるの?〉
だが、声だけが聞こえてくる。
「……幽霊か、いや……しかし、ファンタジーだし」
旬は確証がもてないためか、自分の意見がまとまらない。
〈違うよ。幽霊じゃないヨ〉
またもや聞こえる声に、旬は警戒態勢のまま尋ねる。
「……じゃあ、誰ですかね?」
〈え? 目の前にいるじゃない〉
その返答に、旬は目を細めたり出来る限り見開いたりするが、何も見えない。
〈うーん、正確には君がワタシの中に居るのかな? だってワタシは……このお城だもの〉
予想のはるか斜め上を行く答えに、旬は引きつったまま固まるしかない。
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