第二章 過程と結果

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 国王と宰相の二人と一緒に歩くのは、いささか誤解や問題を招く可能性があるとの事で、ヨハネスの指示に従って旬は謁見の間に遅刻する事になった。 「遅刻をしろ……か」  人生で一度有るか無いかというと、無い部類に入る命令に、旬はつい苦笑してしまう。 「というか、ここ(中庭)でのスリーショットはいいのか?」  旬は中庭を眺めるが、ここは明らかに造られた空間である。というのも、旬が連れられて歩いた距離では、どう考えても外には出られないのだが、旬の入った一階の物置と称される部屋は中庭に繋がっていた。 「城の構造上のデッドスペースを使った隠し部屋か」 〈惜しい、実に惜しいよ。ご褒美にほっぺにチュウか、頭を撫で撫でしてあげる……って、この声は聞こえないか〉  突如聞こえて来た声に、旬は慌てて椅子から立ち上がると、周囲を見回す。 「誰ですか」  360度見回すが、誰も居ない。 〈え! ええ!! ワタシの声が聞こえるの?〉  だが、声だけが聞こえてくる。 「……幽霊か、いや……しかし、ファンタジーだし」  旬は確証がもてないためか、自分の意見がまとまらない。 〈違うよ。幽霊じゃないヨ〉  またもや聞こえる声に、旬は警戒態勢のまま尋ねる。 「……じゃあ、誰ですかね?」 〈え? 目の前にいるじゃない〉  その返答に、旬は目を細めたり出来る限り見開いたりするが、何も見えない。 〈うーん、正確には君がワタシの中に居るのかな? だってワタシは……このお城だもの〉  予想のはるか斜め上を行く答えに、旬は引きつったまま固まるしかない。
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