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旬が来た扉を開けて一歩前に出た途端に、強制的に扉が閉まり、鍵が掛かる音も聞こえた。
「こえー」
挟まれなくて良かったと思いつつ、旬は謁見の間へと走って戻る。
階段を一段飛ばして駆け上っていると、旬の目の前に自称守護精霊が現れた。
〈早く早く〉
「誰のせいだよ。というか、普通に出て来れんだな」
旬は宙に浮かぶキャス子に話しかける。
〈守護精霊ですからネ〉
「浮いてるなんてせこいな」
二階まで上がりきると、旬は上がった息を整える。
〈さあ王様がお待ちですヨ〉
キャス子は言い終わるやいなや、一目散に謁見の間へと向かっていく。それは流石精霊というべきか、平気で壁に突進して消えた。
おそらくは貫通しているのだろう。しかし、いくら何でも自由過ぎである。
「すいません、城の守護精霊はいつもあんな感じですか?」
キャス子が消えた壁の横で、花瓶に水をやる給仕に声を掛ける。
「はい? 守護精霊様が何ですか?」
明らかに不審者を見るような目で旬を見る給仕を前に、旬は思わずたじろいでしまう。
「いえ、失礼しました」
見ていなかったのだろうか、旬はその場から逃げるように謁見の間へと向かった。
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