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旬は晴れて自由に閲覧出来るようになったが、何から調べればいいのか皆目見当がつかない。
「キャス子、どんな本があるか分かったりする?」
〈城内の把握でいっぱいいっぱいですネ。本の把握までは……スミマセン〉
「そっか、なら仕方ない」
利用者が少ないせいなのか、本棚に案内などがなく、旬は気を取り直して、近場の本棚から適当に本を一冊抜き取る。
「モルド諸島史」
埃を被った本の歴史書っぽいタイトルを、旬は読み上げた。
〈おー。流石異世界から来てるだけありますネ。普通にモルド語を読みますか〉
「は? 異世界だと? 何を世迷い言を……」
まだキャス子に対して旬は自身の身の上を話していないが、ズバリ当ててきている。
危うく「なぜ知っている」などと自ら正解を言いそうになるが、旬は冷静に返す。
〈甘いですネ。ワタシは城ですヨ?〉
「な、まさか、城内の会話は……」
〈今はそういう事ですと言っておきますネ〉
つまり、城そのものである守護精霊が居る限り、常に壁に耳あり障子に目あり現象が発生しているわけである。
「まあ、今はそれよりも。モルド語って何だ? 今俺は何語を話してるんだ? 教えてくれ」
かねてより疑問だった問題が再燃し、旬は今が分かるチャンスだとばかりに、ぶっ飛んだ質問をした。
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