第二章 過程と結果

16/50
前へ
/565ページ
次へ
〈今ワタシやアナタは大陸語を話してますヨ? まさしくこの大陸共通語でス〉 「……という事は、言語は二つあるって事だよな」 〈同じく今のところはそうですネ〉  キャス子の返答に、旬は右手を口元に当てて思考を開始した。  言語の違うという事は、モルド諸島と大陸とは文化が大きく異なるのだろう。それこそ、日本とアメリカのように。  もっと例えるならば、大陸全土に普及している大陸語が英語だとすると、モルド諸島で主な言語は日本語だろう。  だが、旬は日本語を話している筈なのだが、今の今まで普通にコミュニケーションが取れている。  ジャン・ズーを立て直す際も、イレイアに日本語を書いたメモを見せたが問題は無かった。  同様に街中の看板も旬は読めていた。  しかし、旬の所持していた本は誰一人として読めていない。 (どういう事だ……俺は日本語を書いて、イレイアさんもそれを理解した。一方で日本語の本をアリアスさんは読めなかった)  同じ日本語なのだが、明らかに何かが違うのだろう。  だが、その違いが分からない。 「キャス子、アリアスさんを探して欲しい」  まずは本人に話を聞くべきだと思い、旬はキャス子に頼んだ。 〈了解しました〉  キャス子は快くそう言うと、壁に溶けて消えてしまった。
/565ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54504人が本棚に入れています
本棚に追加