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迷ったものの何とか宿屋まで帰り、ロビーに入ろうと扉に手を掛けた瞬間、その扉が開いた。
いつの間にか帰っていたシェリーが、旬と入れ違いで出て行こうとする。
明日から一緒に行動するはずなのだが、両者間に言葉や会釈さえも無い。
相手から何も無い以上、自分から言うことは無いと思い、旬は部屋へと戻った。
結果として異世界に持ってきてしまった本を準備し、手持ち無沙汰になった旬は一階に降りるとティーポッドなどの紅茶に必要な一式を借りる。
後は、アリアスが来るのを待つだけとなった。
それからしばらくすると部屋の扉が叩かれ、電池が減らない携帯電話を調べていた旬は慌ててそれをポケットにしまう。
「どちら様ですか?」
「私だ。アリアスだ」
「あ、はい。今開けます」
旬は鍵を開け、扉を引いた。
「失礼する」
「おじゃまします」
アリアスが部屋へ入り、なぜかフローリアまで中に入った。
「あれ? アリアスさん、フローリアさんって……」
バルキリー小隊ナンバー2こと、副隊長のフローリアの登場に旬は首を傾げる。
鬼のように厳しいアリアスに対し、仏のように優しいフローリアなのだから嫌ではないが、何分これから話す内容が内容だけに旬は困ってしまう。
「いや、この場にフローリアは必要だ。彼女もまた、貴公の秘密を知っているのだからな」
アリアスの言葉が旬の耳に入り、長く綺麗なシルバーブロンドの髪を、手櫛で直すフローリアが旬の目に映った。
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