54504人が本棚に入れています
本棚に追加
「とりあえず、読み書きに関しては問題ないという事ですね」
旬は納得といった感じに頷くと、再びベッドに腰を下ろす。
「所で……旬さん、先ほどの箱を見せていただけませんか? というよりも見せて下さい!」
妙に目をキラキラと輝かせるフローリアを見て、彼女が剣を好きな事を思い出した。
携帯電話と剣は全くの別物なのだが、何かが彼女のツボに入ったのだろう。
「はい、どうぞ」
旬はフローリアに携帯電話を渡す。
言語について一件落着し、書庫漁りに専念出来ると思い、旬はベッドに横たわる。
両手を後頭部で組み枕のようにし、天井を見ていた旬は唐突に思い出した。
「ああぁ!!」
そして叫ぶ。
「どうしたいきなり」
フローリアの横に座り、携帯電話を覗き込んでいたアリアスは訝しげに旬を見る。
「明日から任務ですよ! 忘れてた……準備しないと」
言うやいなや、旬は数少ない衣服下着類をクローゼットから取り出すと、ベッドに一旦置く。
そんな旬を見ながら、訳を知らないフローリアは首を傾げて言った。
「任務とはどういう事ですか、アリアス?」
「任務といっても、お使いみたいな簡単なやつだ。ナリタリ鉱山までな」
「ナリタリ鉱山……確かに近いですが、哨戒兵の噂によると、クレタ林道付近に何かが住み着いているとか」
フローリアの言葉に、アリアスの細くシャープな眉が僅かに動いた。
最初のコメントを投稿しよう!