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旬は先行するシェリーの背中を見ていて、そのペースの速さに気が付いた。
体力に自信があるのかもしれないが、あれではついて行く方が大変である。
だからといって旬はシェリーに忠告する気は無いし、彼女に追い付こうとも思わない。
それから約二時間程歩き、なだらかな丘陵地を下った所にある岩に旬は腰掛けて休憩していた。
「あと少しで森か……」
旬は広げた地図を片手に、ペットボトルの水で喉を潤す。
村があるのか遠くに畑が見えるが、あそこへ寄っていたら森に入るのが夜になってしまう。
陽のあるうちに森を進み、暗くなる前に野宿の準備をするのが旬のプランである。
休憩を終えて再び歩き出そうとした時、旬は再び村を見て何かを考える。
(……あの村で二、三日潰して城に帰るのはどうだろう。素人の俺には、鉱石を見つけられなかった……で言い訳になるし、一本道だからシェリーの帰るタイミングも村から分かる)
森手前の分岐点の前に、ミッションをサボるか否かという分岐点を迎えてしまった。
このまま森へ向かう。
このまま農村で過ごす。
「……って、さすがにそれは無いか」
旬はさめざめと村から目を離し、森へ向けて歩み出した。
村に行っていたらまた別の展開になっていたのだろうが、今となってはただの〝たられば〟なのだ。
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