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白髪の麗人が1人、疲れたように溜め息を一つ。
麗人…白銀はこの日久し振りに会社へ赴いていた。
そして徹夜で仕事を仕上げ今、早朝6時帰宅にいたる。
何せただ出来たデータを届けただけなのに、新人のミスがあまりにも酷く駆り出されるハメになった。
自宅のアパートまであと少し、といったところで不意にガサガサと音がした。
「……?」
ガサリ、草むらから何かが出て来ては目が合ってしまった。茶色い耳、同じ髪に尻尾…4歳位の容姿…。
猫、だった。
しかも野良なのかボロボロで汚れている。
「きみ…どこから…」
「フーッ!!」
声をかけた途端警戒し威嚇してきては、どこか怯えたような瞳に…白銀は目を逸らす事が出来なかった。
刹那
フラリと傾き猫はドサリと倒れてしまった。
慌てて駆け寄りそっと抱き上げる。
顔色が悪く腕も怪我をしていた。何より、軽過ぎた。
「……不味いな…」
ボソリと呟けば上着をかけてしっかり抱き締めたまま立ち上がり、アパートに背を向け走り出した。
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