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アパートから少し離れた場所に、その動物病院はあった。
我妻動物病院
院長は人柄も良く優しいと評判で、診察も丁寧で治りが良いと人気の病院だった。
院長、我妻秋一は起こされてドアを開けた。
見れば猫を抱えた知人が困ったように立って居た。
「白銀…どうしたのその子」
とにかく中にと言いながら招入れ、寝間着のまま白衣を着た。
取り敢えず猫を寝かせて診察を開始する。
「…アパートの近くに居て、なんだか放っとけなくて」
「なるほどね…診たところ栄養失調と貧血…疲労が溜まってたんだね」
腕の怪我の周りをまず綺麗に拭いて、消毒と化膿止めに注射をしてガーゼと包帯を巻いた。
それから点滴をやればきちんとベッドに寝かせる。
「暫く入院だね」
「ありがとうございました…すいません起こしてしまって」
「良いんだよ、仕事だから」
そう言いながら手を振り微笑んで、猫の首に目をやる。
と言っても実は院長、目が見えない。
でも感覚や気配で分かるらしいので凄い。
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