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そっと首に指先をつける。
「これ、首輪だよね」
「あぁ、ボロボロですがそうですね」
外そうとしたのかなんなのか、ボロボロになった首輪が首に着いていた。
捨てられたのかと思いながら、威嚇した理由も、なんとなしに分かった。
そもそもこの子は人間が嫌いなのだ。
仲間も作らず人に近寄らずたった1匹で生きて来た。
「……ぅ…」
「あ」
小さく唸りゆっくり目を開けたのを確認すれば反射的に近寄ってしまった。
それにビクリと驚き猫は白銀の手に爪を立てた。
ビリッと痛みが走る。
「っ……」
「白銀、見せてご覧」
怯えたように睨みフラリと起き上がれば、手を押さえながら院長を擦り抜け猫に近付いた。
「あ、白銀…?」
心配そうに言えばあ、と消毒と絆創膏をと診察室に急いだ。
「フーッ!」
「大丈夫ですよ、痛くないから。キミはもう少し寝てなさい」
ニコリと微笑みながら言えば優しく頭を撫でてみる。
再びビクリと跳ねやはり触るなと言わんばかりに引っ掻いてくる。
それに痛がりもせずただそっと離しただけだった。
「……」
「ほら、痛くない」
猫はただ耳を垂れさせ目眩と痛みに再びベッドに身体を沈めた。
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