4月 「入部」

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    ─ヒガシの海河川敷─ 爽やかな春の陽気の中、それとは打って変わって河川敷には泥だらけの2人の姿がある。 マウンドに立った1人が早速振りかぶる。 スリークォーターの左腕から放たれた一球は、ほぼ一直線にベースに座るもう1人のミットに吸い込まれていった。 ──スバン!!! いい音が響いた。 それと同時に威勢の良い元気な声も響く。 「ストライークっバッターアウト!」 「ってね、ナイスボールだぜ和己(カズミ)!」 「でっしょ?いい球行ったと思ったのよ  ありがと明(アキラ)!」 パッパッと砂を払いながら 2人は満足げに歩み寄っていく。 「もっと素直に喜べよ、和己ちゃん!」 「ばかっ!!!ちゃん付けは止めろ!!」 今「ちゃん付け」されてムッとした表情をしたのが三神和巳(ミカミカズミ)。立派な男の子だ。 そして、その和巳を弄ってるのが京都明(ミヤコアキラ)。 2人は昔からの仲で、同じ中学の野球に所属している仲良し二人組であった。
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