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いつもと変わらない業務を終え、ロッカーから上着を取り出し事務服の上に着る。
着替える時間も、私服に費やすお金も惜しい。
慌ててスーパーに寄り買い物を済ませて帰宅。
5階建の棟が居並ぶ団地にぽつぽつと灯りが点りだす。
日が暮れるのが早くなり、薄暗く翳ったベランダから洗濯物を取り込み、洗い晒しのエプロンを着けながら浴室に向かい、ガスのスイッチを入れる。
キッチンに戻り、冷蔵庫にある自筆の在庫表を確かめながら、買ってきた食材を選び夕食の支度を始める。
──緒方綾子、31才。
米を研ぎ炊飯器にセットし、手早く野菜を刻み、魚をおろし擂り身にし揚げ油に火を入れる。
天ぷらを煮浸しにし、お味噌汁に和え物も添え、糠床から胡瓜と大根を出した頃、玄関の鍵が開く音を聞いた。
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