プロローグ

2/3
前へ
/39ページ
次へ
 草木も眠る丑三つ時。1人の女が息を切らせながら走っていた。 「ハァハァハァハァッ!」  カツカツカツカツと静まり帰った郊外の路地に女のヒールの音だけが響いている。 「ハァハァハァハァッ!」  何かに怯えるように、その歩を一向に止める気配もなく、ただ女は前と後ろを交互に確認しながら走り続けた。 「ハァハァ……」  後ろからあいつが着いてくる気配はない。もちろん前にいるはずはない。  女は安心するかのように歩をとめ、公園のベンチに手をかけると息を整えた。  街灯にちらほらと虫が集まっている。街灯があれば誰が来てもすぐわかる。  交番まで後少しの距離まで来ている。  もうすぐだ。もうすぐ助かると女は自分に言い聞かせた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加