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草木も眠る丑三つ時。1人の女が息を切らせながら走っていた。
「ハァハァハァハァッ!」
カツカツカツカツと静まり帰った郊外の路地に女のヒールの音だけが響いている。
「ハァハァハァハァッ!」
何かに怯えるように、その歩を一向に止める気配もなく、ただ女は前と後ろを交互に確認しながら走り続けた。
「ハァハァ……」
後ろからあいつが着いてくる気配はない。もちろん前にいるはずはない。
女は安心するかのように歩をとめ、公園のベンチに手をかけると息を整えた。
街灯にちらほらと虫が集まっている。街灯があれば誰が来てもすぐわかる。
交番まで後少しの距離まで来ている。
もうすぐだ。もうすぐ助かると女は自分に言い聞かせた。
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