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女子の集団で、悪意ある噂話ほど愉快なものはない。雅はそれをよく知っていた。
昔散々言っていたのが、今は言われる側になった。それだけだ。
愛想も良く、評判も悪くなかった沙弓と比べ、雅は完全に悪者になっていた。
今聞こえた噂はまだ可愛い方だ。
中には雅を地元グループのリーダーにしたて、沙弓に援助交際をさせ、 それで得た金をホストに貢いでいたーーーそんな失笑もののデマもあった。
しかし一方で、それらの噂が雅の身を守っているのも確かだ。
軽蔑の眼差しを向けながら、クラスメイトらが彼女に手を出すことはない。
………公にはなっていないが、沙弓は事故当時アルコールを摂取していたため停学処分になっていた。
沙弓が再び登校しない限り、卒業まで雅は孤立し続けるだろう。
辛くないわけではない。
しかし、これは今まで沙弓に依存していた報いだ。
(………負けない)
これからは、1人で戦う。強くなる。
沙弓が帰ってきたとき、今度は助けてあげられるように。
机に顔を伏せる。
昼休みはまだ長い。
瞼を閉じると涙が零れたが、それは世界に無視された。
ーーー雅、本人にさえも。
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