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「梅雨はとっくに明けてるのに、今年は雨が多いね」
「………あぁ」
人気のない霊園、灰色の空。
透明な雫が墓石に落ちる。
森孝司の墓の前に、龍之介と美寧はいた。
龍之介にとっては初めての場所。
作法などよくわからないが、彼なりに誠意をこめて手を合わせた。
ーーー森、悪かった。
助けてやれなくてごめん。それから、沙弓を守ってくれてありがとな。
そんな幼馴染の背中を、美寧はじっと見守っている。
ーーー沙弓はまだ、目覚めないよ。
俺たちが追い詰めたからかな。
お前にしてやれなかった分………いや、違うな。お前に『できるのにしなかった』分、沙弓には手を差し伸べたつもりだったんだけど。
ごめんな。お前が大切に、守り抜いてきた沙弓なのに。
「なぁ、美寧」
龍之介は美寧に背を向けたまま、小さな声で問いかける。
「死んだ人間には、どうすれば償いができるのかわかんねぇんだ。毎日墓参りするべきなのか、森の家族に土下座するべきなのか」
「…………」
「はっきりとしたやり方があれば、どんなに無理してでもそれをするよ。けど、俺は馬鹿だから、どうしたらいいかわかんねえ」
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