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そんなこと、美寧にわかるはずもなかった。否、世界中を探しても、それを知る者がいるとは思えなかった。
「最近さ、沙弓の意識が戻る夢を見るんだ。目を開けた直後にふにゃっと笑って、龍之介、おはようってさ。
復讐のこととか全部忘れてて、また記憶が書き換えられてんだ。
死ぬことなんか頭になくて、『早く元気になって学校いかなきゃ。雅が寂しがってるから』って笑って………」
傘の柄を握る力が強くなる。
「そんなの都合いいし、許されないかもしれないけど、俺は……それでもほっとするんだ。
沙弓が生きて居てくれる。それだけで、俺は………」
「………馬鹿」
美寧は龍之介の隣にしゃがみ、彼のTシャツの袖を掴んだ。
しかし、その手も震えていた。
「沙弓がもう一度笑ってくれるなら、俺が2人分罪を背負うから。どうすれば良い?なぁ、森………」
美寧は心が痛かった。
自分の優しい幼馴染は、こんなにも沙弓を大切に思っている。
沙弓が彼再び記憶をなくして目覚めることを、美寧は最良だとは思わない。
罪を放り出して逃げて良い人間など、1人もいないのだから。
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