『彼』の失った時間

13/72
前へ
/1506ページ
次へ
「いいのって、何が?」 「だって八神西からここまで結構距離あるじゃん。ケンちゃんがそんな時間女と2人でいるなんて、あたしだったらすごい嫌」 美寧は少しだけきょとんした後、すぐにピンクの唇で微笑んだ。 同い年とは思えない、余裕のある笑い方だった。 「そんなこと、考えたことないよ」 「あ、そ」 なんだか雅は不服そうだ。 「つーかお前んとこも仲良いよな。羽賀、高松先輩と何ヵ月だっけ?」 雅の彼氏、高松 健太郎――愛称ケンちゃんは、沙弓たちのひとつ上の先輩だ。 サッカー部キャプテンで、学校1の爽やかさ。 体育祭では毎回ヒーローで、女子からの人気は不動の1位だった。 彼の卒業式前日に雅が捨て身の告白をして、今も交際が続いているのだった。
/1506ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42016人が本棚に入れています
本棚に追加