『彼』の失った時間

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一行の行き先はアンネ――…ハーフのような濃い顔が、教科書に載っていたアンネ・フランクに似ていることでついたあだ名である―――こと、島倉 隆之の両親が経営する飲食店だった。 隆之は高校へ行かず、調理師の専門学校に進学しながら家業を手伝っていた。 『ロベリア』 隅々まで磨きぬかれ、垢抜けたそこはこの辺では浮いてしまうくらいにお洒落な店だ。 見るからに高校生には敷居が高いし、実際値段も安くはない。 しかし本日、定休日。 中にはアルバイトも島倉夫妻も居らず、隆之1人が調理場に立っていた。
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