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「偶然に決まってんだろ」
思いかけず強い口調になってしまったことに、龍之介自身がはっとした。
沙弓は龍之介を見上げた後、悲しげに俯いてしまった。
「ごめん」
「あ、いや……」
「……」
「……」
龍之介はため息をついた。
そして気まずい雰囲気に少し離れてしまった小さな肩を、濡れないように引き寄せる。
そのまま長い黒髪を軽く撫でると、情けなさが込み上げてきた。
―――こんな顔をさせたいんじゃないのに。
「今日はもう帰るか」
「……うん」
「ごめんな。俺、こんなことが言いたいんじゃなくて」
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