『彼』の失った時間

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最寄り駅から歩いて20分。 真澄台女子高等学校の桜は満開だった。 綺麗だな、と10人並みの感想を抱いて沙弓は掲示板の方に向かった。 新しいクラスの発表があるはずだった。 「あっ!沙弓。おはよっ」 人垣の中から手を降るのは、羽賀 雅(はが みやび)だった。 ほんのり茶色く染めた髪が、黒髪の集団の中で目立っていた。 「やったね。また同じクラス」 この年頃の女の子特有の、弾けるような笑顔で駆け寄って来た。 沙弓と並ぶと、その長身が浮き彫りになる。 168センチの雅と153センチの沙弓。身長差は15センチ。 「本当、良かった。他の子は?」 「他の子なんてどーでもいいじゃん。さ、行こ行こ!B組だよ」 「え、ちょっ」 有無を言わせず手を引かれ、沙弓はこっそりため息をついた。 雅が強引なのは、今に始まったことではない。 「はぁ」 ふと視線を感じて振り返ると、去年のクラスメイトの何人かが哀れむように沙弓を見ていた。
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