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「マスター・・・しっかりと仕事をしてもらわないと困ります」
そうため息混じりに呟く青年、津木 玲哉は言った。
そして彼と同じ意見と言うように後ろで掃除をする灯生 智寛も頷く。
「あのねー・・・仕事はもう終わったし、第一、お客が来ないと仕事できないの!!それに何回もいうけど私の事は店長と呼べ!!」
「はい、マスター」
「・・・嫌み?」と黒いオーラを互いに出す二人に灯生はまたため息混じりにこう言った。
「・・・はいはい、仲がええのは宜しいけどちょっと掃除の邪魔やから続きは他でやってくれや」 「・・・別に仲良くなる気はないんだけど」 「仲良く見えるで?」 「・・・最悪」 「お二人共見苦しいですよ?」
「「五月蝿い!爺!」」
プツン・・・
あれ?今何かが切れる音がしたような・・・。
停電だし天気も悪くなってきた・・・。
「ほう?貴方方は其処までして僕を怒らせたいのですか?(ニッコリ)」
津木さん?笑顔なのに怖いですよ?
「「怖い」」
「つべこべ言わず仕事に戻って下さい、智。まだ埃が残っていますよ?」
「・・・はい・・・」
「マスターも何かやったらどうですか?店員を増やすとか、ね?」
「無視」
「聞いていますか?チビマスター?」
「イラッ」
「僕を辞めさせますか?ムカつくので」
「・・・」
「無理ですよね?確かに僕達は貴女に『生かされている』けれど貴女には僕達を手放す覚悟はないですよね?また『あの事』を繰り返すのですか?」
「・・・凄い自信だね」 「実際にそうでしょう」 「・・・ふん」
此処は森の奥深くにある屋敷。一人の店長と数名の店員が働いているお店です。え?何を売っているかって?お菓子?物?・・・いいえ。詳しく言えば貸している、の言った方が正しいのかもしれません。限られた短い時間の中、貴女が少しでも幸せになれるように。 短くて・・・甘い時間を・・・。少しでも永く『彼』と過ごせるように・・・。
先程まで雨が降っていたのが嘘のように外は満天の星空であった。
「僕は『貴女に生かされている』か・・・」
玲哉はそう小さく呟き、すっと目を細めた。
少し違うかもしれませんね。僕『達』は貴女に・・・マスターに生かされている。名前も・・・感情も持っていなかった僕達に色々教えてくれたマスターに。
「感謝の気持ちを一日たりとも忘れた事はありませんよ。僕も多分その他の『モノ』達も・・」
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