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快晴の空に下手くそな口笛が響く。
ポケットに手を突っ込み、肩幅を広く見せてきょろきょろと周りを見渡しながら、大股で歩いている男。
山下雅人、それが男の名である。
新調した制服のズボンは既に腰より下の位置で履かれ、裾は地面を擦っている。
ローファーをカパカパと間抜けな音を立たせながら、少し顔が緩んでいた。
今日で俺も都会デビューだっ。
そう意気込んでいる雅人は、今日から都内の学校に通うことになっている。
雅人は田舎者の自称不良。親の都合で都会に越してきたのだ。
前の町では喧嘩で雅人の右に出る者はいないと言われるほどの喧嘩に強い男として名を知られていた。
引っ越してきて都会の奴らにも俺の凄さを見せてやろうと気合いが入っているのだ。
上京するにあたり、赤メッシュを入れてみた。ショーウィンドーに出くわす度に髪を確認する。
ワックスで立たせた髪の跳ねを整えて、都会の風を感じながら歩く。
雅人の足取りは軽やかだ。
そして、ローファーの音は校門の前で止んだ。
「ここが紅梅学園か…」
校門の前で仁王立ちし、校舎を眺める。うむうむと何度も頷き、顔はにやけ出す。
「よっしゃ行くぜ!」
雅人が学園に踏み込んだ途端、一時間目の授業終了のチャイムが鳴った。
雅人は既に大遅刻をしていたのである。
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