プロローグ

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「山下君、今日は初日だから大目に見るけど明日からは遅刻しないように!」 「いやー電車に乗り損じたんすよ、ははっ」 そう言って頭を掻く雅人。 実のところ、彼は7時半には家を出ていたのである。 駅で定期券を買うよう親に言われ、お金を預かって駅に向かったのは良かったものの、雅人には定期券というものがどういうもので、どこで買えばいいのか分からなかった。 人に聞くのは性に合わない雅人は、切符販売機で買えるのだと機械とにらめっこしていたのだ。 雅人の後ろには列が出来、まだかまだかと雅人が退くのを待っている。しかし、機械のボタンに『定期券』というものがない。 仕方なく後ろにいたサラリーマンのおじさんに尋ねると、馬鹿扱いにされ胸ぐらを掴んで反抗してしまった。 それから駅員が止めに入って云々で、気付けば一時間目が終わっていたのだ。 「……そう」 担任である岡本勝義は雅人の隣を歩きながら、呆れたように肩を落とした。 「D組は個性的な生徒が多いから面白いと思うよ」 「個性的…」 「ここだよ」 体育の教師にしては朗らかとした笑みを見せ(雅人にはどうやら体育教師はいかついイメージがあるらしい)、扉を引いた。 .
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