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「千尋~~~~~~~~~~!!」
静まり返っていた放課後の教室に、大きな声が飛び込んできた。
その聞き慣れた声に、勉強する手を止め、星野千尋は顔をあげて、声のする方を見た。
「聡美、声大きいよ!」
乱れた呼吸を調えながら、親友の聡美は言う。
「ごめん…今日用事できたから一緒に帰れなくなっちゃった」
新野聡美(ニイノサトミ)は、本当に申し訳なさそうに謝った。
「そっかぁ…大丈夫だよ。もしかして、彼氏??」
「うん…偶然暇できたって…」
かわいい顔をうつ向かせて、本当に申し訳なさそうに言う。
「滅多に会えないもんね。しっかり甘えてきなよ??」
「うん!ありがと!!」
パァッと聡美の顔が明るくなる。それを見て千尋も笑顔になった。
「千尋も今日は一人になっちゃうし、早く帰りなよ?」
「う~ん…でも勉強したいし…」
「ダメだよ!最近通り魔でるし、千尋はただでさえ美人なんだから!!」
親友の言葉に思わず赤面してしまうと、焦って千尋は否定する。
「美人じゃないよ!それに…通り魔はとなり町に出ただけだし…」
「…と~に~か~く!本当に気を付けてね?じゃあもう行くね。また明日!バイバイ」
教室に入ってきたときの慌ただしさのまま、聡美は教室から出ていった。
「ふぅ…」
嵐が去って、再び教室に静けさが戻ってきた。
「よし、もうひとふんばり」
そう自分に言い聞かせると、千尋はまた勉強に集中し始めたのだった。
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