3.

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「……ッは、」 一気に肺へと吸い込まれた酸素に噎せて咳込む。苦しい。いや、それよりあの子供は。生きてるのか。 「オイ」 反応が無い。何より顔色が病的なほどに青白い。口元に手を翳した。ヤバい。呼吸が停止している。誰か、コイツを病院へ…助けを求めようと周りを見渡しそこでやっと気が付いた。誰も人がいない。あんなに人が集まっていたのに。帰ったのか、一人残らず。最低だ。最初からコイツを見殺しにしようとしていたしな、あいつら。あいつら全員首絞めてやりたい。いや、そんなことより今俺一人しかいない。俺がなんとかするしかない。俺はなんとしてでもコイツのことを助けたくなった。なんでだろう。そこまでする義理は、俺にはないはずなのに。蘇生をさせようと子供の胸部に両手を置いた。当然鼓動は伝わって来ない。身体が、冷たい。そして、心臓マッサージを施そうとした瞬間だった。 どくん 手を置いた胸部からいきなり鼓動が伝わって来た。俺は驚いて咄嗟に置いていた手を外しまった。 「ぅ、ゴホッ、ゴホッ」 なんてことだ。俺はまだなんにもしていない。コイツは自立で蘇生した!? 「…オ、オイ、大丈夫か?おま……」 眼も醒めるような金色だった。子供の髪の色は。こんなに鮮やかだというのに気が付か無かったのはさっきまで気が動転していたせいだ、絶対そうだ。しかし、ああ、なんて綺麗なんだろう。ゆっくりと上がった瞼から除いた蒼い瞳は先程より美しく見えた。蒼と金とのコントラストに、俺は魅せられた。子供はやっと、今気が付いたようにこっちを向いた。コイツの瞳に俺の顔が蒼く映る。暫く子供は俺を眺めていたがややあって口を開いた。 「お前、オレを助けたのか」 ボケッと見惚れていたから反応が遅れたが、とりあえず頷いた。オレ…俺って男かコイツ。マジか。綺麗な顔しているしかなり華奢だからどっちかというと女だと……声も男にしては高い。 「ありがとう」 俺ははっとして子供―――少年を見た。少年は既に立ち上がっていて歩き出している。慌てて少年を俺は追いかけて手首を掴んだ。今、何か、しゃべらないともうこの少年とは二度と逢えない。訳も分からず俺はそう思った。少年の手首は今にも折れそうなほど、細かった。 +
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