1.絶望の世界の始まり

2/3
236人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
道を歩く度に視線を感じた。 兄であったうちはイタチが一族を滅ぼしたが、世界は特に何が起きる訳でも無くただ時間は無情にも通り過ぎていくだけだった。まるで、ゴミ箱に捨てられたゴミ屑が一カ所に集められて燃やされるような。ごく自然過ぎる流れに乗った感じで。こんな、俺はこんなにも死にたくて死にたくて堪らないのに。誰一人分かってない。分かっている気持ちになって皆が皆俺に同情して、ああ、大変な思いをしたね辛かったでしょなんて可哀相な子!!などと勝手に盛り上がってる。ふざけるなよ。てめぇらに何が分かるってんだ。クソが。クソヤロー共め。今も幸せそうに笑ってるてめぇらの面見ただけで、吐き気がする。嗚呼、終わってしまえ、こんな世界。俺は心中で何度も繰り返し唱えた。なんどもなんども。ずっと唱えていれば叶うと信じている餓鬼のように。そんな訳無いのに。 反転した世界 家には居たくなかった。血痕の跡など残っていなかったが、良くない。家に居るのは非常に良くないと一族が滅んですぐ分かった。死の臭いがする。まったく酷い臭いで敷地内の全体的に染み付き、お蔭さまで俺の頭は発狂寸前だ。死臭は俺に言う。死ね。死ね死ね死ね。死んでしまえ。何お前独り生き残ってんだ。この先生き残ったってどうせろくなことないよ。こっちにお前もこいよ。楽に成れるから。早く、こっちにこい。これが毎日毎日臭いと共に俺に囁きかける。だから家には居られない。俺は人通りの無い道を選んで歩いた。なんにもない道だった。当てもなく歩いていたら、前に父さんに一度だけ修行をみてもらった川に辿り着いた。意図して来たのか、無意識か。どっちでも同じか。そこで腰を下ろして眼を閉じた。もう何も視界に入れたくなかった。意識と風景を遮断する。俺は闇の中に独りなった。この世の全てから置いてきぼりを喰らったようだ。独りだ。もう何もない。そうだな。俺が今死んだところで誰も悲しまないんだろうな。また同情されるだけか。リアル過ぎて、笑えない。死にたい。死のうか。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!