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「なら、疑惑の翼…あんたの右手のもんをいただこうか。
あんたはこれを使い、偽りの魅力で人を騙し、2カ月余りで巨額の富を得た。
もう十分だろ?」
老人の顔がまた真っ青になった。
「こ…これはだめだ!」
老人が右手をかばった。
少年は少し笑う。
「ずいぶん利口な使い方だが…使い方が悪かったな。
5年、10年とかけてコツコツやればあるいは目を付けられずにすんだかも知れなかったが…人の欲深さには本当に吐き気がするよ。」
「頼む!まだ…まだやり残した事が--」
「ドン!」
教会の中に雷鳴のような銃声がなり響く。
老人の額を大粒の汗が流れた。
老人の右頬ギリギリにハンドガンの弾痕が煙を上げている。
「悪いな、めんどーなのは嫌いなんだ。早くしな…」
少年の眼光に老人の右手が震える。
「う、うわぁぁ―」
老人はいきなり暴れだし、上着を脱いだ。
腰に長い棒が刺さっている。
それを引き抜くと少年に向かってかまえた。
それは紅く輝いている槍に見える。
「おまえさえいなければ…お前さえいなければ!」
老人は呪文のように同じ言葉を繰り返した。
槍がそれに呼応するかの用に、紅い光が脈打ち、まばゆくなっていく。
少年はハンドガンを構え老人に向かって発砲した。
「チュイン、チュイン」
弾は老人に当たらず地面にはじき落とされた。
紅い槍が弾の軌道を逸らしたようだ。
「この槍を手にした私に勝てると思うな!その体…ズタズタに引き裂いてやる!」
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