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ウィクネは寝間着姿のまま、こっそりと二人が仲良く手を繋ぎながら旅立つ姿を見ていた。
もうすっかり放心状態だった。何故だか分からないけどティアラはいつもウィクネの世話をしてくる、ウィクネにとって唯一の友達と呼べる人だった。
たまに我が儘を言ってくる可愛い妹のようでもあったし、多少なりと魔法を教えて貰い、姉のようでも、母のようでもあった。
そんなティアラが去年旅立ちの日を迎えた時はすごく悲しかった。
別れの覚悟を決めていた、けれどティアラは次の日もウィクネを朝から起こしに来てくれた。
何故行かなかったのかと問い詰めると、言い渋っている様子だったので強くは聞けなかった。もしかしたらウィクネの為かもしれないと考えた時もあった。
結局、現実は村の皆の言う通りにあのいけすかないスレイスと一緒に行ってしまった。
スレイス母やティアラ父に囲まれている時に見せたティアラの笑顔に酷く心を痛まされた。
あの笑顔は自分だけに見せてくれるものだと思っていた。
ウィクネはティアラのいないマル村に居たいとは思えなかった。
一人でもいい。元々、俺は独りだ。今更、何も感じない。
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