2 始まりの森

2/14
前へ
/42ページ
次へ
 小鳥の囀(さえず)りが聞こえる長閑な午後。  丁度、お日様は青空の頂辺の位置まで昇り、青い野原を駆ける少年を見守るよりにさんさんと照っている。  野原を駆ける少年は先程までは意気消沈した様子を隠す事なく淡々と歩いていたが、スライム等の下級モンスターに遭遇し今は必死に走って逃げている。  まだ真新しい青い軽鎧は傷一つ無く、少年が一撃も攻撃を受けてない事を示している。  下級とは言え人外の身体能力を秘めたモンスターから追いつけない程の速度を出すその健脚は素晴らしいものだ。  足の早い少年の夢は空を飛ぶ事だったりする。  そんな少年ウィクネは本日朝早くから失恋を体験し、死に向かう意気込みで旅に出たが迫り来る死の恐怖、具体的にはスライムに対して当然の如く堪える事が出来ず敵前逃亡を謀っているという事だ。  回り込んで来る複数のモンスターを常人では有り得ない跳躍をして回避する。  足の早い四足歩行するモンスターさえも振り切り、死角の多い森の中へと逃げ込む。  先程から見せる驚異的は脚力はウィクネが長年夢に見る空を飛ぶ事を叶える為の第一歩として助走の練習として暇を見付けては走っていた成果なのだ。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加