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ウィクネは飛べないが跳べるのだ。
まだ幼い頃に見た、同じ村に住む天才少女と呼ばれ、金髪を靡(なび)かせ空飛ぶ妖精に憧れ
彼は情けなく跳び続ける。
ぞろぞろと追い掛けてくるモンスター軍団を背中越しに見つめて、うんざりしてため息を吐く。
こんなにいっぱいの魔物どうしようかと考えるが逃げるしか策が思いつかない。
群れに向かって、大きな火球が飛んできた。
紅蓮の炎に焼かれて数十匹いた魔物のがどんどん消し炭になっていく。
やばい、より上級の魔物のが現れた。そう思い、今までの中で1番高く速く跳び、遠くの森に逃げ込んだ。
「ふー、やっと振り切ったか」
森に逃げ込んだ後も執拗に追い掛けてくるモンスターの目から逃れる為に何度が跳躍を繰り返し、流石に息切れをして膝に手をつきウィクネは暴れる心臓を宥める。
一通り辺りを見渡し近くに敵意があるものはいない事を確認して、やっと安堵の息を吐き、心配症なウィクネは大きな樹の根の影に隠れて腰を下ろす。
「やっぱ、死ねのは怖いな、うん」
一人で納得したように頷く。
覚悟を決めて村を出たがやはり死ぬのは御免だし、戦うなど論外だ。
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