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村に帰ろうかとも考えるけど、村を出て数時間は経つ。既に村にウィクネが居なくなっている事に気付き大騒ぎしているのではないか、と思うと今更、家に帰る事は出来ない。
逆に居なくなって村の皆が喜んだりしているかもしれない。マル村にはティアラしか理解してくる人が居なかったんだ、もうティアラは居ない、そんなマル村に戻ってどうなる。虚しいだけだ。
またブルーな思考に陥ってしまったウィクネは背後から再びモンスターを近寄って来ている事に気付かない。
狼に似た魔物は四つの脚を音の鳴らないように巧みに動かし、自然に紛れてウィクネに近付いて行く。
完全に間合いに入り込み、殺気を解き放ち、ウィクネに飛び掛かる。
ウィクネは背後からの大きく跳ぶ獣の気配に気付き振り向く、視界にはすぐ目の前まで迫る肉食の顎が写る。
咄嗟に左腕を顔の前に出して致命傷のみを避ける為の防御と右腕は一度も抜いていない腰に提げた剣に伸びる。
ウィクネは感覚的に間に合わないと判断出来た。自分は此処で死ぬのだ。
左腕に鋭利な牙が触れた瞬間、狼に似たモンスターは何かに依って弾き飛ばされた。
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