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――勇者。それは正義の象徴。勇気と光を胸に抱き、仲間と共に、魔王を討たんとする者。
村では毎年、教会に選ばれた15歳の少年少女を勇者、またはそれを助けるサポーターとして送り出している。
今年もまた選ばれた少年少女が旅立つ。
長閑な田舎の風景が保たれ、農業が盛んな小さな村、マル村では毎年恒例の旅立ちの儀式が行われようとしていた。
この小さな村には教会がなく、別の大きな村の教会から選抜の通達が送られてくる。
今年は2名。子供の少なく、一人も選ばれないことが多いマル村には珍しく複数の子供が選ばれたことになる。
それは良いとして、村人は教会の人選に対して不満というより不安があった。
まず一人目のスレイスは問題ない。彼は非常に賢明で、剣術にも長けているため、スレイスが選ばれることは皆予想していた。
不安なのは二人目のウィクネ。普段は無気力で害はないが、益もない少年だが、突然、大きな夢事を語り出し、実行して、必ず失敗する。
今までに何度、空を飛ぶなどと戯言を言って死にかけたことか。
だからと言って度胸がある訳ではない。村が襲われた時など真っ先に逃げる。
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