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村では口だけの度胸なし、ウィクネはそう呼ばれていた。
村人が不安を抱いている中、当の本人は案の定目茶苦茶ビビっていた。
ベッドの上で掛け布団を頭から被り外界からの情報の全てを遮断し、現実逃避に励んでいる。
その傍らにはローブを纏う金髪の美少女が立っており、必死にウィクネに呼び掛けている。
「ウィクネ、起きなさい。貴方はやれば出来る子なんだよ、いつもみたいに大空を目指して走り出せばいいじゃない、ね」
心優しいウィクネの幼なじみのティアラは一生懸命ウィクネを説得しようとしている。何が彼女をここまで頑張らしているのだろうか。
「うるさいやい、空を飛ぶのは俺の夢だ。しかし、何が悲しゅうて魔王の相手をせにゃならんのだ。俺の気持ちが空飛べる魔法使いに分かるもんかい」
全く聞く耳を持たないウィクネは情けない自分に対して唯一と言っていいぐらい丁寧に接してくれている金髪の幼なじみに怒りをぶつける。
ウィクネに非道いことを言われて、少し涙ぐみながらもティアラは説得を続ける。
「ひ、酷いよ、ウィクネ。私がどんな気持ちでこの一年間を待っていたと思うの」
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