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「ティアラちゃんってば、いつまでも照れてないでさっさと行ってしまいなさいよ。ウチのバカ息子なんかほっといてさ」
膠着状態の続く三人に、ティアラが二人きりにしてくれと頼んだにも関わらず恐らく勝手な思惑を働かせてスレイスを招き入れたウィクネの母が入り込んできた。
「お義母さん」
ティアラは深い意味を込めてウィクネの母をオカアサンと呼ぶ。
「本当はスレイス君と一緒旅立ちたくて一年間旅に出るのを送らせたんだろ。村の皆はちゃんと分かっているさ、照れ隠しにウチのバカ息子なんか誘わなくても二人でお行きよ」
無駄に優しい笑顔を満開にしてウィクネ母はティアラに語りかける。
ティアラは怒りで顔を真っ赤にしている。
なんなの、その勝手な解釈は。きっとまたスレイスが自分の都合の良いことを言いふらしたに違いない。
「…そ、そう、だったのか」
ウィクネは重苦しげに言葉を放ち、それ以上何も言わず寝間着姿のまま家を飛び出して行ってしまった。
「ウィ、ウィクネ、違うのよ」
ティアラは誤解を解く為に追い縋ろうと足を踏み出すが、スレイスに手を引っ張られて前に進めない。
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