第2章 奇跡

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早く思い出してと祈りながら。 「ほら、思い出して。私が初めて歩きだした頃、二歳の写真よ。お母さん感激して笑っているね。そしてこれは、幼稚園の運動会の時。お父さんが綱引きで頑張ってくれたから、私の組は勝てたんだよ。お母さんのお弁当大好きだった。特に卵焼きは格別だったよ。ねぇ覚えているでしょ。」しかし母は、まるで何か不思議な物を見るような目で、写真を見つめるだけだった。夏子は母に私を思い出して欲しい。ありったけの思い出を、母にぶつける。 「じゃあこれは?小学校の入学式。一緒に手を繋いで、桜並木を歩いたでしょう。綺麗だったね。あの桜。」 母はまだ思い出さない。
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