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その時夏子は悟った。本当に大切な記憶や思い出は、頭で記憶しているのではない。心で記憶しているのだ。認知症になっても心は澄んでいるから、思い出せるんだ。心で覚えてくれる。希望はあるのだ。
「母さんごめんね。」
夏子はそう言って、母を抱きしめた。
「あらあら、どうしたの?小さい子みたいに。」
母も娘の肩を抱いた。
「なんでもないの。」
本当に希望はある。例えそれが小さくても、きっと宝石のように輝いている。
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