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第三章 桜
私(夫)は妻と旅行に行った。もちろん行き先は、プロポーズしたあの桜の場所。
妻は思い出してくれるのだろうか。胸に不安がよぎった。妻を見ると、旅行にはしゃいでいた。久し振りの旅行だった。新婚旅行で温泉に行ったきり、連れて行ってあげる事ができなかった。仕事ばっかりだったからだ。皮肉なもんだ。病気になってから、こんな時間ができるなんて。
「ごめんなぁ。もっといろんな所に連れて行ってあげれたら・・・。」
私がそう言うと妻は、笑顔で答えた。
「これから沢山連れて行って。新婚旅行に行った温泉に入りたい!」
その言葉を聞いて、私は驚いた。もう妻はとっくに忘れていると思っていたからだ。
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