第三章 桜

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電車を降り、バスに揺られて30分。そこに思い出の場所はある。満開の桜とそばを流れる川のせせらぎは、昔のままだった。妻の様子を見ると、何か不思議な物を見るような目で、周りを見つめていた。 「覚えているかい?」 私がたずねでも、振り向きもせず桜を見つめていた。 「桜…なんて綺麗なんでしょう。」 やっぱり何も思い出さないのか。奇跡は起きないのか。心よ、早く思い出してくれ! 「何でこれを私に見せてくれたの?」 そう妻に聞かれ、私は動揺した。
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