第三章 桜

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プロポーズの場所だということを話してしまおうか。そうすれば思い出してくれるかもしれない。嫌、駄目だ。妻から思い出さなければ、意味がない。でも駄目かも知れない。桜は妻の心を刺激していないようだ。やっぱり私だけの思い出になってしまったのか?寂しすぎる。忘れるというのはこのような事なのか。本当に伝えたい事は、伝わらない…。もう帰ろう。 「お前は花が好きだから、一緒に来たんだよ。そろそろ帰ろうか。」 諦めて帰ろうと、妻の手をそっと引いた。だが妻は動かない。 「どうした?」 妻の顔を覗いた。するとさっきまでとは違い、妻の顔は輝いている。まるで若い頃のように、頬を赤く染めていた…。
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