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妻は私の手を握った。妻の手から暖かさが伝わってくる。
「…桜…とても大切な場所なのよ…」
希望が一気に膨れ上がる。
「…お前…。」
早く妻の次の言葉が聞きたい。
「…この桜…そうなのよ。私とあなたが愛を誓いあった場所。あのプロポーズの言葉…『愛してる』。ずっと一緒に生きていたんだね!」
やっと思い出してくれた。私がどれほど心待ちにしていたか。やっぱり心で覚えていてくれたよ。私は妻を抱きしめた。
「ああ、愛してるんだ。愛してる気持ちは、今もこれからもずっと変わらない。これからも共に生きていけるよ。」
共に生きていける。思いはずっと妻に伝わっていたのだから。
その夜、二人は若い頃のように、そっと手を繋いで帰って行った。
旅行から帰ってから数ヶ月が立った。妻は相変わらず、思い出したり思い出さなかったり、曖昧なままの病状が続いた。だが周りの状況はとんでもなく変わってしまった。
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