第四章:癌(主人公夫)

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私は定年まで仕事詰めで、家族の事までかまってあげれなかった。なのにこれ以上妻と子供を置いて逝けるのだろうか。いや、私はみんなに自分の死に顔を見せたくはない。家族を悲しませる事はもうしたくない。それにもう一つ不安な事がある。私が先に死んで三途の川で妻を待っていても、妻は私だと分かって一緒に渡ってくれるのだろうか。心の記憶があると分かっていても、不安になってしまう。私はこれからの行く末を考えると、不安で仕方がなかった。 私はその不安を打ち消す為に、妻との思い出を増やす為に、沢山の旅行をした。妻と二人で写真を撮った。記憶を永久の物にするために。一人だけの思い出にしないように。 でも長い年月はだんだんと妻を変えていってしまった。
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