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話が少々逸れたが、その間にもしっかりと時間は進んでいた。
俺と日和との距離は、いよいよ無くなりつつあったのだ。
日和の吐息と、俺の寝息(とは言えこれは演技だが)が重なる。
もう、俺達の距離は十五センチ定規でも計る事が出来る程しかない。
日和の髪がはらりと流れ、俺の左頬に触れた。
右は日和の掌で、左は髪によって、俺の両頬は包まれていた。
俺は今、寝たフリがまともに出来ているのだろうか。
不自然に目を強く綴じていないだろうか。
顔は火照っていないだろうか。
呼吸は荒くないだろうか。
……日和にバレていないだろうか。
まあ、バレてもいいか……なんてな。
──あと五センチ。
その時はアイツ、かなり恥ずかしがるだろうな。……照れた顔は、嫌いじゃない。
寧ろ好きだ。……起きてみようかね?
──あと三センチ。
多分、その後は俺を叩いて、顔を隠して、少し残念そうな顔で俺に意地悪だのバカだの言ってきて……。
ハハッ、俺も大概ヤバいな……こりゃただの妄想じゃねぇか。
だけど、ま……何でか、アイツの事が前より近くに感じられる気がする。
──あと、一センチ。
ああ。
俺、幸せなんだな。
俺はつい、フッと口許に笑みを浮かべた。
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